卒業生・修了生メッセージ

黒澤 寿美 さん

児童学研究科 博士後期課程修了

児童学研究科 博士後期課程修了

算数教育の指導指標を構築。
5年におよぶ研究が新たな目標へと導いてくれました。

愛媛で大学教員を続けながら、研究を深められる環境が聖徳にあった。

 7年にわたり公立小学校の教諭として子どもたちを指導するなかで、算数の問題をどう解けばいいのか見通しが立たない児童を見てきました。そんな児童の指導に有効なのが、答えというゴールから解き方を探る「逆向きの思考」です。
 「おつりがわかるためには買った値段がわかればいい」「買った値段がわかるには1個の値段がわかればいい」という考え方ですが、教科書ではあまり扱われておらず、現場では経験則で教えています。その「逆向きの思考」を大学院で研究し、20代後半で修士号を取得。その後保育士や幼稚園教諭を養成する大学(短期大学部)で勤務。算数が好きな子どもを増やすため、小学校に進む前の幼児教育を担う人たちに算数への興味を喚起するものを教えたいと考えたのです。
 指導を行ううちに、私自身が研究者としての確かな視点を持つことの重要性に気づき、博士論文に挑戦することを決意。けれども、短期大学はスケジュールがハードです。しかも、勤務先は愛媛県宇和島市。通学で学ぶことは困難なため、通信制で博士後期課程を持つ聖徳大学大学院に進む道を選びました。説明会で「聖徳での学びは大学教員としてのあなたの力になる」という先生の言葉も私を後押ししてくれました。

信頼できる先生と共に学んだ仲間は聖徳で得た一生の宝。

博士論文の完成までは長い道のりでした。博士論文提出には学会誌などへの論文掲載(紀要1本、論文2本・当時)が必要ですが、掲載できる論文が1本しかなく、学会誌に掲載する論文や紀要の作成から始めました。3年という長い期間で行った博士論文の研究・調査をもとにしたので、すべての論文・紀要を仕上げるまでに4年かかりました。
 モチベーションが下がることもありましたが、指導教員の増井三夫先生はいつも丁寧に指導をしてくださって。また、同期のゼミ生5人の強い絆も励みになりました。「みんなが修了するまで、ゼミに参加しよう!」を合言葉に、博士号を取得した仲間もゼミに参加してアドバイスをくれることもありました。修了後も長くつながれる先生や仲間と出会えたことは、聖徳で得た宝です。

現職教員の指導に役立つ指標を構築。今後も算数教育に尽力したい。

博士論文のテーマは「算数の問題解決における子どもの思考過程に関する研究」。計算問題は解けるのに、文章題になるとわからなくなるという子どもは多くいますが、そのつまずきに対する指標は提示されていません。また、算数・数学教育において「考える力」の育成は重要なテーマですが、子どもの思考過程に即して具体的に明らかにする研究手法は採用されていませんでした。
 私の研究は、質的研究手法により、問題を解くときの子どもの思考過程を明らかにし、指導指標の構築を目的としたものです。具体的には、小学校5年生の児童が虫食い算を解く過程の「つぶやき」を文字化し、共通の特性を見出して概念化。つまずきに有効な声かけを可視化しました。研究により、思考の進度を評価する視点や指導上の指標を提示できたと考えています。
 今後は対象とする学年や問題を広げて「考える力」を高める評価や指標を探り、研究を深めたいですね。また、幼児教育から「考える力」を育てることを視野に入れた「幼小連携のカリキュラム」の構築も目標。私の研究が教員の助けとなり、算数や数学を好きになる子どもが増えることを願っています。
 この4月より、新しい職場が中学・高校の現場となり、日々生徒と向き合うことができるフィールドができました。数学が苦手な生徒に聞くと、小学校の時につまずいてしまい苦手になってしまったという人がとても多いことに改めて驚きました。せっかく生徒たちとかかわる時間ができたのですから、一人でも多くの生徒に算数・数学の楽しさを伝えていきたいと思っています。