卒業生・修了生メッセージ

中村 直貴 さん

心理・福祉学部 心理学科卒業

心理・福祉学部 心理学科卒業

心理職の現場で、自分をどう活かしていくか。
聖徳での4年間、常に考えていました。

人はなぜ洋服を買う?

もともと洋服が好きで、心理学にまったく興味はありませんでした。高校を卒業後、アパレル企業に入社し、6年間、接客や店舗運営などを学び、25歳になる前にアパレル通販会社を起業しました。心理学に目覚めたきっかけは、会社勤め時代に販売戦略を考えたこと。例えば、異性にモテたいと思っているお客様に、洋服の品質の良さをアピールしても買ってもらえません。大切なのは、お客様がどのような価値観で洋服を買うのかを探ること。まるでカウンセラーのようにさまざまなお客様と対話を積み重ねていくうちに、洋服よりも人間の心理に関心を持つようになり、大学で本格的に学びたいと思うようになったのです。
 本音を言えば、起業したのは自分のペースで心理学の勉強に取り組みたかったから。会社を経営する傍ら、心理学の専門書を読み漁ったり、インターネットで学会やセミナーを調べて参加したりしていました。その中で、聖徳大学の菅沼憲治先生の講義を受ける機会があり、丁寧に教えてくださる姿勢と人柄にとても魅力を感じたのです。また、そこには熱心に勉強に取り組む聖徳大学出身の先輩方もたくさんいました。そのような出会いを通して、聖徳なら本格的に心理学を学べると確信し、仕事も続けながら勉強するために通信制を選択しました。

800冊以上を読破

4年間の学びはおおむね順調でした。自分に課したのは、1年間分の教科書が届いてから1ヵ月以内にすべてのレポートを終わらせること。もともと怠け者なので期限を決めることで自分を鼓舞していました。無茶ぶり(笑)のようですが、やってみるとできるものです。まず参考文献を揃えて一気に読み終えると、1日にレポートを10枚以上、ひたすら書き続けます。このスタイルを毎年続けたことで、心理学の専門書を読むことに時間を割くことができ、4年間の在学中に800冊以上読むことができました。さらに、ボランティアとして「いのちの電話」の相談員を務めたり、英語を学ぶためにフィリピンへの短期留学にチャレンジしたりと、勉強以外にもさまざまな経験ができたのは通信制で学んだおかげです。
 スクーリングも大学生活を充実させる大きな要因です。毎年、キャンパスで知り合った仲間と親交を深めることを楽しみにしていました。学習の進み具合をお互いに報告したり、得意科目を教え合ったり、一緒に勉強することが楽しく、学びを続けるモチベーションになりました。実際、私は数学が苦手でしたが、友だちにマンツーマンで教えてもらったおかげでレポートも科目終了試験も合格できました。4年間の勉強は順調だと言いましたが、一人ぼっちで通信制で学ぶのはキツイ。スクーリングで友だちを作ることはとても重要です。

子どもを支えたい

子どもの時の経験は人格形成にどう影響するのか? 脳の発達などを踏まえてどう支援していけばいいのか? 心理学を学ぶうちに、自分のやりたいことが「児童期の子どもの支援」に絞られていきました。卒業後はアパレルの仕事は完全に辞め、現在は児童相談所で児童相談員として、問題を抱えた家族の支援を担当。また、別の児童自立支援施設でも心理判定員として、定期的に子どもたちに面接を行っています。発達心理学や臨床心理学、家族心理学など、聖徳で学んだ知識が今の仕事の拠り所です。子どもの成長を支えるうえで、小さな変化を見逃さない大切さを日々、実感しています。
 子どもや保護者をサポートしていくうえで、学校の先生や社会福祉士、看護師など、他の専門職との連携は欠かせません。聖徳では児童学科や社会福祉学科など、自分とは違う分野を学ぶ友だちと出会え、スクーリングなどを通じてお互いの専門性について語り合う機会をたくさん得られました。心理学とは異なる物の捉え方を知ることにより、他の専門分野と協働するスキルを学生のうちから学ぶことができます。
 在学中に心がけていたのは、「何のために勉強するのか?」と自問すること。テストに受かるためではありません。私の場合は、卒業後に心理職のプロフェッショナルとして働くイメージを常に持ち、現場でどう活かせるのかを意識しながら学んでいました。卒業はゴールではない。「その先」を見据えてがんばり続けたことが、今の自分につながっていると思います。